11/12(土)、TOHOシネマズ池袋の『すずめの戸締まり』舞台挨拶上映を観てきました。
※こちらは写真撮影okだった舞台挨拶
TOHOシネマズ池袋、ティーチイン終了です。ホームに帰ってきたみたいな楽しい時間をいただきました。お付き合いくださった皆さま、ありがとうございました!
— 新海誠 (@shinkaimakoto) 2022年11月12日
次はTOHOシネマズ日比谷にうかがいます。 pic.twitter.com/wlUaxS1QGD
まず、結論から言うとすっっっごく良かったです!!
そんなわけで舞台挨拶のレポと最後に作品の感想なんかを書いていきたいと思います。
㊟本作および過去作のネタバレを含みます。
㊟レポはメモ書きををもとにしたものなのでニュアンス等違う場合があります。
監督登場
- 自己紹介で「君の名は。の…」と言い間違えてしまう新海監督。
- 今の気持ちについて「とても怖い」。興行収入が微妙だったり、観ている人の心に届かなかったらもう無職になるしかない(笑)
- すずめは2020年から作り始めたけれど、君の名は。も3.11のメタファーであり、そこから6年間作り続けていたような気持ち。
ここで、「自信作です!」「過去最高作です!」とか言わないところがとても新海監督らしい
声をあててくれたキャストさんについて
- 誰の話を聞きたいか観客にアンケートをとる監督
➡芹澤に一番多く手が上がる。
*芹澤朋也
草太の友人。口ぶりや振る舞いは乱暴だが友達思いな青年。愛車は赤いスポーツカー。
- この一つ前のムービックス埼玉の舞台挨拶でも同じ質問をして芹澤が一番多かったそう。
(監督)「なぜ芹澤が一番多いの(笑)」 - 芹澤はとても重要な役、ミッドポイントを担っている。
*ミッドポイント
ミッドポイント (Midpoint) は、全体のおよそ半分、第二幕の中間60分ほどで起こる非常に重要なイベントである。ここで映画は前半と後半に分かれる。ミッドポイントからは主人公の危険度が急に上がる。
主人公が敵対者と大きく衝突するため、このイベントはターニングポイントと同じ程度かそれ以上の転換シーンになる。
ミッドポイントでは突然、主人公の目的や主張 (argument) を打ち砕く何かが起こり、ストーリーを正反対に方向転換させる。
- 草太にも別の世界(日常)があると認識させる存在。
(芹澤の登場でガラッと場面が変わる) - すずめを遠くまで導く存在。
- 神木くんにぜひ演じて欲しかった。神木くんにしかできない役。
- 当然受けてくれると思ってオファーしたらなんと一度断られた。
(断った理由は君の名は。の主人公である瀧役をやっているのでそのイメージを大事にしたかったそう。) - 監督直々に神木くんに電話をしてなんとか受けてくれるよう頼んだ。
- 瀧くんとは違う芝居を目指した。低めのトーン。
- 監督は芹澤の車が落ちるシーンがお気に入り。
新海監督、神木くんのこと大好きすぎる
音楽について
- 少女の成長の物語なので、女性の声のほうがいいのではないか?とRADWIMPSの野田洋次郎さんから提案を受けた。
(そこで十明さんに主題歌の歌唱を依頼) - 違う映画の音を作るために、今作では新たに劇伴作家の陣内一真さんに入ってもらった。
- キャラクターの叫びや喋りを邪魔しない劇場のための音楽になっていると思う。
質疑応答
- なぜ今作では実際に起きた災害(東日本大震災)をテーマにしたのか?
監督の娘さんが現在12歳で震災の時は1歳だった。
あんなに大きな災害だったけれど娘さんの記憶にはあまり残っていない。
いま作れば若い人に向けて共通体験としてつなげられるかもしれないと思った。
※これについては詳しくは新海誠本(監督曰く薄い本)に載っています。 - 最後の子すずめ(子どものすずめ)とすずめのシーンについて
一番大事なシーン。
小林直樹さんという若手のアニメーターさんに担当してもらった。
実際の子どもの動きを参考にしている。
バックではずっとすずめのテーマソングが流れている(ル、ルール、ルルルールのハミング)
すずめが子すずめに「大丈夫」というシーンについて、
星のこえ、秒速、天気の子でも「大丈夫」というセリフを使っていて、これまでは誰かに向けての「大丈夫」だったけれど今作では自分に向かって言っている。
「自分が自分に救われる」物語。
※「子すずめ」という名称は実際に現場でもスタッフ用語として使われていたそうです。 - キャラクターをよく旅に出させるのはなぜか?
環さんとすずめが言いあうシーン、あれはサダイジンが環に言わせた言葉だけど、心のどこかにそういう気持ちがなかったわけではない。
すずめもどこかでそれを感じていた。すずめにはどこかに行きたいという気持ちがあった。
新海監督自身が長野県の山に囲まれたところで育ったため外に出たいという気もちを常に持っていた。 - 「お返しします」「お返し申す」という言葉にこめられたものについて
家を建てる時は地鎮祭をやるのに無くなっていく時はなにもやらない。
無くなった場所をもともとの自然に返すのが閉じ師の役目。
最後は「行ってきます」にしたのは、この場所は返すけど自分たちは別の場所に行きますというのを込めた。
以上、舞台挨拶レポでした!この先は私自身の感想になるので興味ない人はスルーで
感想
この『すずめの戸締まり』という作品を見て、まず思い浮かんだのは新海監督の別作品の『星を追う子ども』でした。
これもかなりファンタジー色の強い作品で
・アガルタ(死後の世界)
・猫(のような神に近い生き物)
・クラヴィス(鍵)
などいろいろ共通点があります。
まあ詳しくは本編見てください。(丸投げ)
(書いてて思ったんですが、女主人公も『星を追う子ども』以来ですね。)
私はそんなに『星を追う子ども』嫌いじゃないんですが、当時はけっこう酷評で、まあ実際ジブリとエヴァをめちゃくちゃ意識しているな~という感想でした。
ただ、今作は『星を追う子ども』で微妙だったところが払拭されていました。
『すずめの戸締まり』も新海監督作品の中ではファンタジー色の強いものになっていると思うんですが、日常も隣り合わせにあるというのがちゃんと描写されているのですんなり世界に入り込めた気がします。
例えば、草太さんは閉じ師なんてやってるわりにはちゃんと大学に通って教職取っていたり、芹澤みたいな友人がいたり。
あと、テーマがめちゃくちゃ重いのにコミカルなシーンも多くバランスが良かったです。
そして、何より音楽!
今作から劇伴作家の陣内一真さんを迎えたというだけあり、音楽が作品に溶け込んでいました。
『君の名は。』でどうしても気になるところを1つ挙げるとしたら、最後の方で連続でRADWIMPSの音楽が流れるシーンが少し音楽PVみたいになってしまっているところだったんですね。
(あれはあれで勢いがあるし、音楽の力でぐいぐい引っ張ってくれているのであの演出が悪いと言いたいのでは決してないです!!!)
劇場の音を意識した、と監督が言っていただけあって迫力がありつつ作品の邪魔は全くしていなくて素晴らしかったです。
あと、みんな大好き芹澤朋也。
Twitterで右を見ても左を見てもみんな「芹澤朋也」で、新海作品でここまで特定のキャラがオタクの心つかむの初めてではないでしょうか。
(私もイチオシは芹澤朋也です。)
実際、舞台挨拶で監督もこんなに芹澤が注目されていることに困惑していて、たぶん狙って作ったキャラクターじゃない良さもあるんでしょうね。
チャラそうに見えて友人思いだったり、教員志望(学生証によると大学は立教)だったり、そういうところが一見正反対の草太さんと気が合うのかなあ、とか描写が少ないことでより妄想がはかどりますね。
(ちなみに草太はさん付けで芹澤はフルネーム呼び捨てなのに深い意味はないです)
最後に、監督の言葉で一番刺さったのが「自分が自分に救われる物語」でした。
パンフレットでも「誰もが『君の名は。』の瀧に出会えるわけでも『天気の子』の陽菜に出会えるわけでもない」と言っているんですが、今作は今まで以上に観客に寄り添って作られた作品なのかなと個人的には思いました。
つらつらいろんなことを言いましたが、とにかく素晴らしい作品でした!
ここまで読んでくださってありがとうございました。